top of page

緑内障


緑内障は視神経の神経変性を伴う失明につながる病気です。 人においては眼内圧の上昇が緑内障を進行させる主な危険因子のひとつであると考えられているが、獣医領域では緑内障はいつも眼内圧の上昇を伴っている。

緑内障のメカニズムを理解する為に眼内圧を維持する眼房水の排出について確認が必要である。眼房水(目の中を満たしている液体)は虹彩の裏側にある毛様体で産生され、虹彩を抜け、虹彩角膜角という部位(虹彩と角膜間にあるメッシュ構造物)を通り眼外に出て行く。房水の産生と排出はおおよそ同じ率で行われ、眼内圧は安定して15-25mmHg内に維持されているので、房水が排出されることで眼内圧の上昇が抑えられているとも言える。このバランスが崩れ眼圧が高くなると、視神経を構成している細胞が死滅し、結果として失明につながる。

要約

  • 失明するリスクの高い眼科疾患

  • 早期発見治療によって視力が守られます。

  • 眼内圧のコントロールが視力維持に必要不可欠です。

分類

一般的には、2つのカテゴリーに分類される。

  1. 原発性緑内障

  2. 続発性緑内障

  • 原発性緑内障

原発性緑内障は他の眼科疾患を伴わずに発症します。ある犬種では遺伝要因があると考えられている。また原発性緑内障は①開放隅角、②狭隅角もしくは閉塞隅角に分類される。原発性開放隅角緑内障は人で良く見られるが、獣医領域では稀な病態である。 原発性狭隅角もしくは閉塞隅角緑内障は隅角発生不全と言われる正常な排出系の発達上の欠落によって生じる。

  • 続発性緑内障

続発性緑内障は房水の排出を妨げる他の眼科疾患に続発して生じる。それらには眼内炎、レンズ脱臼、眼球への外傷などが原因となる。

失明の原因・問題点

緑内障により失明する原因は視神経への神経刺激が遮断されるためである。視神経が修復不能な障害を受けたならば、視力を保存する方法はない。早期に適切で積極的な内科的、外科的治療を受けられれば、視力が保存される確立はあがるでしょう。残念ながら過度な眼内圧の上昇は、永続的な失明と痛みを動物にもたらします。またこの時点での治療の目的はコスメティック、痛みからの解放、動物の快適性に重きをおきます。

診断

病歴、臨床症状、眼内圧、隅角所見を基に行う。

症状

緑内障の臨床症状には

  1. 結膜の赤み

  2. 角膜の濁り

  3. 散大した瞳孔

  4. 痛み

  5. 末期には眼球の拡大がみられる。

治療

診断がつき次第、積極的内科治療が一般的に行われます。一時的な滞在治療が必要になることもあります。その際には経口もしくは静脈から浸透圧利尿薬を使用する治療法など眼内圧を短時間で減らす集中治療が行われる。いったん眼圧がコントロールできたら、維持用量での治療を開始する。治療薬は房水の排出促進薬、産生抑制薬である。排出促進する薬には、ピロカルピン、demacarium bromide andラタノプロストがある。産生抑制する薬は、炭酸脱水酵素阻害薬、βブロッカーである。残念ながら内科治療では視力を守りきれないことがあります。初期にみられた治療への反応は永くは続かないず、過去の治療暦からも眼内圧を内科治療のみで管理するのは不可能と思われる。その為、眼内圧管理のための様々な外科的アプローチ術式が行われている。それには①視力を守る手技、②動物の快適性のための手技がある。

①視力を守る手技

毛様体光凝固術 - この手技では、房水を産生している毛様体の細胞をレーザー熱によって破壊し、房水産生を低下させ眼内圧のコントロールを試みる。しかし、レーザーエネルギーによって眼内炎を生じさせてしまう為、処置後に緑内障を悪化させることがある。眼内出血や白内障の形成は通常見られないが、合併症リストにあげられる。時間と共に房水産生細胞が再生され眼圧の上昇がみられれば、再度処置が必要となるでしょう。

ゴニオインプラント - 房水の排出を促進させる為に、排出装置を外科的に設置可能です。排出用チューブは眼内に設置され、 それらは圧力調整弁によって調整されている。この手技は非常に効果的ではあるが、インプラントが結合組織にパックされるに伴い、機能を果さなくなっていく。報告によると平均6ヶ月で機能しなくなるケース、または2年以上眼内圧を良好に保っているケースもでている。毛様体光凝固術は通常この術式と組み合わせて行われます。合併症としては眼内出血、炎症、感染、 インプラントの移動がみられる。眼内炎が非常に強ければ、排出チューブの目詰まりが生じ眼圧コントロールが困難となる。

②の快適性に対する手技はほかのハンドアウトでご紹介いたしております。

予後

残念ながら、獣医領域において、緑内障は未だ失明につながる病気です。知らぬ間に進行している為、初期段階で発見されることは稀であり来院時には既に失明していることが少なくない。緑内障の治療に対する獣医眼科医の治療目的は、 視力を守る、もしくは、コスメティックな問題に取り組み痛みのない状況を維持すること。緑内障の子の視力を維持するには①早期の診断②適切な治療③定期的な評価 が必要です。


特集記事
最新記事
アーカイブ
タグから検索
まだタグはありません。
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square
bottom of page