角膜潰瘍
角膜は透明でドーム状の部分です。目のなかを保護し、光を眼内に通過させることで目の機能を維持しています。正常な角膜は4層構造で、それぞれ表面から、上皮細胞層、最も厚い実質層、デスメ膜、内皮細胞層があります。角膜潰瘍は上皮細胞層の損傷によるもので痛みは伴うが、単純性角膜潰瘍は適切な治療によって3-4日で治癒する。治癒の遅い場合や悪化する場合は再検査が必要です。分類として複雑な角膜潰瘍、難治性角膜潰瘍などがある。
要約
単純性角膜潰瘍は適切な治療によって3-4日で治癒する。
治癒の遅い場合や悪化する場合は再検査が必要です。
角膜潰瘍の評価で最も重要な検査機器は双眼スリットランプです。
複雑な角膜潰瘍
治り難かったり、悪化したり、感染が成立している角膜潰瘍は複雑な角膜潰瘍と考えられます。以下のカテゴリーに分類される。
治癒遅延の原因が、外眼部の場合。外傷、異物、睫毛の異常が考えられる。
治癒遅延の原因が、目の疾患の場合。KCS、緑内障、炎症（ぶどう膜炎）
潰瘍が深く進行していく場合は、細菌、カビの感染が考えられる。このタイプの潰瘍は進行が早く、穿孔する場合もある。角膜融解と言われる現象が起きる。実質の構成物が細菌や炎症細胞によって破壊され、劇的に軟らかく、弱まり、実質を維持する強度を失う。重度な眼内炎、角膜穿孔、視力を失う。
自然発生慢性角膜上皮欠損 (SCCEDS)
原発性の組織治癒異常で、表面の潰瘍の治癒過程で、再生された上皮が実質に密着できない状態である。中年～老齢犬にみられ、ボクサー犬で多く見られる。ホルモン異常、代謝異常を伴った犬でも見られる。甲状腺機能低下症、糖尿病、クッシングなどがあげられ、角膜治癒を遅延すると考えられている。この種の角膜潰瘍は、ボクサー潰瘍、難治性角膜潰瘍とも呼ばれる。 上皮細胞が固定する能力、実質に密着する能力に問題が生じている。それでも上皮は増殖し、潰瘍部を覆うように働くが定期的に剥がれ落ち、正常な瞬きや目を擦る動作によって誘発される。
診断
複雑性角膜潰瘍の評価には眼科精密検査が必要です。角膜潰瘍の評価で最も重要な検査機器は双眼スリットランプです。スリットランプでは高倍率な解像度でどうぶつの角膜の評価が可能となります。 潰瘍の原因として、異常な睫毛、異物が確認され除去することによって治癒する。複雑性角膜潰瘍を更に評価する為に追加検査として、細菌培養、ウィルス培養、細胞診を行う場合がございます。
治療（難治性角膜潰瘍）
難治性潰瘍は病名にあるようになかなか簡単には治癒しません。角膜穿孔などの状態に至ることは多くはありませんが、治癒遅延が生じます。内科治療としては、予防的抗生物質の投与としばし浸透圧性物質を用いるが、治癒率はせいぜい15%です。推奨される治療法は角膜切除術と呼ばれる外科処置や、格子状切開術などがあるます。この手技の第一目的は、実質に密着していられない角膜上皮細胞を取り除くこと。鋭利な針を用いて実質表面に溝を掘ります。この溝によって不健康な角膜を破壊し、新しい健康な上皮細胞を根付かせ ることに役立つ。動物の性格、潰瘍のサイズによるが、これらの処置は表面麻酔、全身麻酔下で行う。この処置によって治癒は促進されるが、 難治症例では処置を繰り返し行う必要がでてくる事がある。より侵襲性の高い表層性角膜切除術が適応されるかもしれない。角膜の表層が外科的に取り除かれ、不健康な角膜実質は剥ぎ取られる。
深部角膜潰瘍の治療法
角膜潰瘍が角膜の50%の深さまで到達したら、穿孔の危険性が高くなり、それにより失明することがある。 積極的な内科治療が必要で、しばし外科手術が必要となる。
深部角膜潰瘍を治療する様々な術式がある。一般的に行われる手術は結膜移植術、角膜強膜移植術などがある。結膜移植術では、透明な結膜の一片を角膜の欠損部に当てる。角膜強膜移植術では健康な角膜を部分的にはがし、病変部に当てる。 正常な眼球組織で病変を修復させることが出来る。 術後しばらく、眼瞼を部分的に縫合する。これにより眼瞼は病変部および繊細な移植片を保護する絆創膏のような働きをする。移植片への摩擦を抑え、快適性の向上にも役立つ。 すべての角膜潰瘍で手術が必要になるわけではないが、合併症についてお話しておかなければなりません。どんな手術でも合併症がございますが、よく知られているのは麻酔のリスクです。角膜の手術で合併症は頻繁に見られるものではございませんが、おおむね5%未満です。
